2012年2月27日

書店のブックカバー

今回は、書店が巻いてくれるブックカバーのお話。

 前回は、本にカバーはいらないという話をしましたが、書店さんが買った本につけてくれるカバーはどうでしょうか。実は、これも必要ないと思っていました。なぜなら、本棚に並べた時に、どれがどれやらわからなくなってしまうことと、せっかくの表紙デザインが生きてこないということです。最近は、エコの理由から、購入カウンターで、入り用かどうか聞いてくれるので、いらないという場合が多いです。


これは、JR大阪駅の御堂筋口側にあるスタジオ・ブックさんのブックカバー。全面きれいな焦げ茶色一色で、お店の名前とマークが、小さく、さりげなく入っています。なかなか、いい感じだったので、つけてもらいました。高級文房具などで、よく気に入られる色です。写真で、本の上に写っているのは、これもお店のオリジナルしおりです。ふつうのしおりの大きさより、ぐっと小さくてかわいいです。オモテは焦げ茶色、ウラは薄茶色です。小さくて、使い勝手がいいかもしれません。

 こうしてみると、書店のブックカバーも、なかなかいいものだなと思いました。このお店は、電車の乗り換えや時間待ちのときに、ちょっと寄るというお客さんが多い書店なのですが、いろいろ工夫を凝らして頑張っているなあ、と感心しました。これから、このブログでも、ユニークな書店カバーをとりあげていこうと思います。

2012年2月23日

シンプルの見本

やっぱり、気になるのがこの本。



 何回か前の、このブログで、シンプルの見本として、この本をとりあげました。あのときまで、本屋で何回も、手にとっては、見ては、触っては、めくっては、・・・を繰り返していました。でも、ついに昨日買いました。読むためではなく、シンプルな本のお手本としてです。とにかく軽い。うれしいほど軽いので、本をぐっと身近に感じることができます。

 読むためではないと言ってしまっては、著者の唯川さんに失礼なので、読んでみます。


 著者の唯川恵さんは、あとがきのなかで、「カバーも帯も使わず、軽装で、馬具の中に簡単に放り込め、くるっと丸めて手に持つこともできる。ある意味、雑誌に近い、そんな本にしたかった」と、書いておられます。これこそ、「かんよう出版」のめざす本の姿です。

 でも、こんなことは、有名作家の作品の、大手出版社による本だからできることで、弱小出版社には不可能なこととも思えます。シンプルにすることで、コストも安くできますから、計算上は定価設定も安くできるはずなのですが・・・

 この本をいつも持ち歩いて、商談のときには、これをひとつのモデルとして提示しようと思っています。

2012年2月20日

co.jp か com か

新しく、まったくゼロから何かをはじめるときに、あれかこれかという選択に悩まされます。究極の選択というほどでもない、どちらでもよさそうな選択に。


 前々回のローマ字表記もそうでした。悩み抜いたあげく、あえて誤記という道を選びましたが。いま、4月に立ち上げるホームページのデザインに悩んでいます。しかし、その前に取得するドメインに悩みました。

 co.jp か com か、ふたつにひとつ、どちらにするか。結論は出まして、com となりました。
co.jp は法人つまり会社でないと取得できません。com は個人でも、つまりだれでも取得できるのです。要は、co.jp のほうが企業としては格段に信頼性が高いのです。

 「かんよう出版」の場合、株式会社ではなく、日本ではまだめずらしい合同会社ですので、なおさら、co.jp で、ちゃんとした会社だよ、というドメインのほうがいいのです。しかし、登記してからでないと取得できないので、設立前から立ち上げて盛り上げていくということができません。立ち上げを遅らせても co.jp にこだわるか、com で早々に立ち上げるのか。

 結論を出す前に、簡単にすぐに取得できるcom を、とりあえず取得してみました。そうすると、意外とそれが気にいってしまって、即刻それにすることに決定しました。何でも、行動に出てしまうと、そのことで状況が変わって、なぜ悩んでいたのかと不思議に思うようなことがありますね。悩んでいるときは、ハムレットの境地ですが、あとから思えば、どうということのない、どちらでもいいような・・・。しかも、URLには、なぜか www がなくて、http://kanyoushuppan.com となりました。かんたんでバッチリ。

 ぜひ、ひんぱんにアクセスしてください。といっても、まだ、ふたつのブログだけですが・・・。


2012年2月19日

フランクフルト・ブックフェア

  フランクフルト・ブックフェアというタイトル。別にそのレポートでも、最新情報でもありません。ただ、行ってみたいなあ、というだけのお話。

 ブックフェアは世界各国のたくさんの都市で毎年開催されているようですが、そのなかでもやはり、何といってもドイツはフランクフルトのブックフェアが、歴史も伝統もあり、来場者も多いし、権威があります。出版に携わろうとするなら、一度は見ておくべきフェアでしょう。




この写真、そのフランクフルト・ブックフェアが開催される会場メツセ・フランクフルトの、なんでもない、ただの休館日のものです。ブックフェアの画像を載せたいのですが、著作権にはぴりぴりしていて、©フリーか、結局自分が撮ったものしか載せられません。これは一昨年フランクフルトを訪問したときの写真。ここで、ブックフェアが開催されるのだと思うと、なんだかゾクゾクワクワクしてきます。

 ブックフェアは、要は国際書籍見本市。国際モーターショーのような華やかさはありませんし、新作といっても、たかだか書籍なので、自動車のコンセプトカーのように、そんなに目新しいものではありません。でも、いろんな本がたくさんずらっと山積みされている光景は壮観ですし、出版関係者がところ狭しと商談をしている光景はこの出版不況のときに頼もしくも思えます。

 行くぞっ、フランクフルト・ブックフェア。見にいくのではなく、いつの日か、出展社として行きたいものです。

ローマ字表記

  ローマ字表記は、けっこう難しい部分もあって、悩みます。

 それは長音のときです。たとえば、伊藤さんとか大沼さんとかいう名字の方がいらっしゃるとすると、Itなのか、Itoh なのか、Itou なのか。Onumaなのか、Ohnumaなのか、Ounuma なのか。
 
 昔からのヘボン式に加えて、いくつかの方式があるのですが、語尾に長音が来る場合は、上に傍線をつけるというのが正解です。ただ、パスポートなどにも使うので、oのままというのが通例で、その場合、伊藤さんと糸さんの区別はつきません。語頭の場合は、hをつけてohとするかoだけそのままかのどちらかですが、通例そのままが多いようです。これも、大沼さんと尾沼さんとの区別がつきません。

 なぜ、こんな話をするかというと、「かんよう出版」の「かんよう」のローマ字表記を決めるときに悩んだからです。結局、ご覧のURLのとおり、kanyou としました。これはいずれの表記法にもない表記で、いわゆる誤記とされるやりかたです。東洋・・・という場合、toyoであってtouyouは誤記なのです。だから、東洋大学は、toyo universityという表記にしています。

 でも、もし「かんよう出版」の「かんよう」をkanyoとすれば、「かんよう」も「かんよ」も同じになってしまいます。特に、外国人のかたに呼んでいただくときに「かんよしゅっぱん」ではないので、あえて誤記を承知で kanyoushuppan としました。

    そんな Kanyoushuppan をよろしくお願い致します。

2012年2月13日

ホイットニー・ヒューストン追悼

ホイットニー・ヒューストンが亡くなりました。群を抜く歌唱力で、特にスローナンバーの曲は感動的で、固定ファンではなかったにせよ、たいへん好きな歌手でした。残念です。

 You Tubeで彼女のステージを見ながら、 出版業に携わる準備をしている身としては、どうしても考えてしまうことがありました。明日、レコード店には開店と同時に追悼コーナーが設置されて、ドッとCDが売れるのだろうな〜と。

 本の業界では、同じことが、つい最近では、スティーブ・ジョブズで起こりました。それは、今もなお続いています。本屋に行くと、ジョブズの本がずらりと並んでいます。死後、新刊がまた続々と出たようですね。でも、この中でずっと版を重ねて永遠に残る本はどれだけあるのだろうかと思います。

 ジョブズの場合、死の直後に刊行された自伝は必ず残るし、最も基本的な、イノベーションとプレゼンテーションに関するものも残るでしょう。でも、安易なセリフの抜粋や、格言集としてセリフをとりあえず寄せ集めたようなものは、これまた必ず消えるでしょう。商品が出てはすぐ消えていく、ひところの缶ビールを思い出させるような・・・。

 亡くなって、翌日から売れるのは、悪いことではなくて、追悼の意味もあれば、そのことで故人の業績がさらに広く知られることのになるので、結構な現象と思います。でも、それに便乗して、あまりにも安易な商品が生まれたり、安易な商法がまかり通るのは、いかがなものか、と、そのような在り方を、つい心配してしまいます。

 というようなことを考えながら、とりあえず、明日は早速、ヒューストンのCDを買いにいくことに決めました。

2012年2月11日

かんよう出版の顧客とは

   経営学の神様、ドラッカーさんは企業の経営にとって最も大切なことをいくつも言ってますが、そのひとつに顧客の創造ということがあります。で、それを考えるときに、まず顧客とはだ誰のことか、ということになります。

 出版社の場合、顧客とは誰でしょうか。基本的には著者と読者です。超大手出版社ですと、著者はきわめて限られた有名人、読者は不特定多数ということになるでしょう。でも、弱小の「かんよう出版」は、著者も読者も不特定多数の人ということになります。

 人間は一生にひとつの小説が書けるといいます。それは、誰もが他の誰かとまったく同じ人生を歩むということはあり得ないからです。人の数だけの違う人生があるからです。ということは、人とは違う体験を書くことができて、人は自分の人生とは違う物語を読んで面白いと思うからです。

 もちろん作家ではない人が、いくら自分のことを書くといっても、そううまくいくものではないでしょう。でも、一度は挑戦してみてもいいのでは・・・。それを、ほんの少しの人に読んでもらえればいいのではないでしょうか。たくさんの人に読んでもらえればそれはそれでうれしいことですが。本にしてたくさん売ろうと思うのではなく、自分の記録として書き上げて、知り合いではなかったほんの少しの人がそれを読んでくれればいいと思うのです。

 「かんよう出版」は、どんな人でも自分の本を出したいという人がいらっしゃれば、そのお手伝いをしたいと考えています。

ローマの休日



 ある人が旅先のイタリアから送ってきてくれた、昨日の、ローマ市内の、とある書店の写真です。


 ローマのどこのなんという書店なのかは、まったく情報がありません。でもかなり大きな書店のようです。どっしりとした、いかにもローマ風の白い建物の中に、センスのいい並べ方をしてます。真ん中の円形のスペースも、なかなかいい感じです。

 この書店には、喫茶スペースもあって、自由に本を手にとって読みながら、珈琲を飲めるようです。最近、日本でもこの手の書店が増えてきましたが、本屋がそういうくつろぎのスペースになることは、ほんとうにいいことだと思います。

 で、そこで手にとった本が面白くて全部読み終えてしまった場合、読み終えたからもう買わないのではなくて、読んだからこそ買っていくらしいですね。読んで面白かった本はやはり自分の手元にいつも置いておきたいものなんだと思います。

 「かんよう出版」も、手にとって読み出したらやめられなくなるような本を出したいものです。

2012年2月7日

シンプルな本の一例

最近の本で、シンプルの好例をあげると、書店で見かけた新刊のなかでは2冊あります。


 ひとつは唯川恵の『ヴァニティ』。この表紙は、ただの厚紙のみ。カバーも帯もついていません。表紙のデザイン性はありますが、至ってシンプルです。おまけに本文の紙質も昔のザラバン紙風。だから定価も安くて900円です。ここまでシンプルにすることによって価格を下げて売り出した出版社(光文社)には敬意を表したいと思います。なんせ1000円以内の本はめずらしくなりましたから。

もうひとつは、文庫だが伊藤計劃の『ハーモニー』。表紙は白地にタイトルと著者名と出版社名のみ。あとは、紙質、カバーなど他の文庫本と同じですが、表紙のシンプルさに驚かされます。それでも、文字の配置や字体にデザイン性は求められていて、いい感じになっています。もし、この文字まで白くしてしまえば、ビートルズのホワイトアルバムを思い出します。あれこそ、シンプルの極地でした。


「かんよう出版」も、このようなシンプルさをめざします。

2012年2月5日

本屋の棚

今日の日経朝刊書評面に、東浩紀という作家が、「棚作りの意図がわかりすぎてしまうこと」が理由で、書店に行かなくなったと書いていました。それは、どの書店も多すぎる新刊をずらっと並べて、売れない本やほんとうの良書を置いていないからだといいます。

 確かに、あまりに膨大な新刊の量に、求める本を探すの一苦労ということは多いですね。ただ、書店員が決して意識希薄なのではなく、書店員もそのジレンマに悩んで棚に本を並べているのだと思います。だからこそ、書店員がそういう潮流に巻き込まれずに、独自性を出そうと努力している書店も多いように思います。

 超大手書店にはそれは望むべくもないのかもしれませんが、それでも新刊は新刊で割り切って並べて、売れないけれども読まれるに足る良い本もしっかりと並べて売っている書店もあります。書店員の感性で品選びをして、やはり良書の販売、つまり売れそうになくても、ちゃんと棚に並べて、読者に良書と出会う機会を提供していることに力を入れる本屋さんが増えてほしいと思います。

 

2012年2月4日

Simple is Best


    かんよう出版の本づくりはシンプルをめざします。

 日本で売られている本は、どれもこれも華美で立派すぎます。どれもハードカバー。それに必ずカバーが一枚巻きついています。その上にまた帯がついてます。こんなにたくさん必要でしょうか。

 帯は、本の内容が一目でわかるので買う時には役立つかもしれませんが、あとは不用品です。一枚のカバーも、手にとる回数が増えれば増えるほど、持ち運べ運ぶほど、ずれたり折れたり端がやぶれたり、厄介で邪魔になります。ハードカバーも、頑丈にはなりますが、重くなるし、そこまで頑丈に守らなくても、そんなに本が壊れるということもないでしょう。

 ということは、少々厚手の表紙がついていて、中身がわかる言葉、つまりタイトルと著者名さえ表紙に書いてあれば、それで十分なのです。ただ、それだけでは面白味がないから、若干のデザインが施された装丁は欲しいかも、という程度です。

 本がどれもこれもこんな立派なのは日本だけだと思います。海外では、いわゆるペーパーバックス版でなくても、ハードカバーは少ないし、カバーが一枚巻きついている本もそんなにはないだろうし、帯がついている本なんてほとんどないのではないでしょうか。(すべて見て回ってはいないので、少々自信のない言い方になってしまいましたが)

 という思いから、かんよう出版は、昔某社のCMで流行ったかどうか、正しい英語かどうかしりませんが、Simple is Best をモットーとしているのです。

日本語の醍醐味

 「かんよう出版」はもともと「寛容出版」か「寛容社」という名前で考えていました。

 でも、いまどき漢字ばかりが四文字も並ぶ社名なんて流行らない、ひらがながいい、選挙でも名前をひらがなにするんだから、ということで、「かんよう」とひらがなにしました。
 
 すると、ひらがなにすることで、五つの意味が出てきました。日本語って面白いですね。というか、これこそ日本語の醍醐味。だからシャレというものが面白いのです。

 会う人ごとに、この五つの意味を説明するのですが、食いついてくる方は、やはり中高年の人と、文学好きの人。中高年はこういうシャレが大好き、そして文学好きのひとはこういう言葉の妙味を大切にするひとが多いということでしょうか。

 いずれにせよ、ひらがなにして、偶然にせよ、本づくりにふさわしい意味が五つも重ねることができたのには驚きでした。いろんな言葉はすべて等しく素晴らしいけど、日本語はこの点では特に素晴らしい!!!