2012年2月11日

かんよう出版の顧客とは

   経営学の神様、ドラッカーさんは企業の経営にとって最も大切なことをいくつも言ってますが、そのひとつに顧客の創造ということがあります。で、それを考えるときに、まず顧客とはだ誰のことか、ということになります。

 出版社の場合、顧客とは誰でしょうか。基本的には著者と読者です。超大手出版社ですと、著者はきわめて限られた有名人、読者は不特定多数ということになるでしょう。でも、弱小の「かんよう出版」は、著者も読者も不特定多数の人ということになります。

 人間は一生にひとつの小説が書けるといいます。それは、誰もが他の誰かとまったく同じ人生を歩むということはあり得ないからです。人の数だけの違う人生があるからです。ということは、人とは違う体験を書くことができて、人は自分の人生とは違う物語を読んで面白いと思うからです。

 もちろん作家ではない人が、いくら自分のことを書くといっても、そううまくいくものではないでしょう。でも、一度は挑戦してみてもいいのでは・・・。それを、ほんの少しの人に読んでもらえればいいのではないでしょうか。たくさんの人に読んでもらえればそれはそれでうれしいことですが。本にしてたくさん売ろうと思うのではなく、自分の記録として書き上げて、知り合いではなかったほんの少しの人がそれを読んでくれればいいと思うのです。

 「かんよう出版」は、どんな人でも自分の本を出したいという人がいらっしゃれば、そのお手伝いをしたいと考えています。

ローマの休日



 ある人が旅先のイタリアから送ってきてくれた、昨日の、ローマ市内の、とある書店の写真です。


 ローマのどこのなんという書店なのかは、まったく情報がありません。でもかなり大きな書店のようです。どっしりとした、いかにもローマ風の白い建物の中に、センスのいい並べ方をしてます。真ん中の円形のスペースも、なかなかいい感じです。

 この書店には、喫茶スペースもあって、自由に本を手にとって読みながら、珈琲を飲めるようです。最近、日本でもこの手の書店が増えてきましたが、本屋がそういうくつろぎのスペースになることは、ほんとうにいいことだと思います。

 で、そこで手にとった本が面白くて全部読み終えてしまった場合、読み終えたからもう買わないのではなくて、読んだからこそ買っていくらしいですね。読んで面白かった本はやはり自分の手元にいつも置いておきたいものなんだと思います。

 「かんよう出版」も、手にとって読み出したらやめられなくなるような本を出したいものです。

2012年2月7日

シンプルな本の一例

最近の本で、シンプルの好例をあげると、書店で見かけた新刊のなかでは2冊あります。


 ひとつは唯川恵の『ヴァニティ』。この表紙は、ただの厚紙のみ。カバーも帯もついていません。表紙のデザイン性はありますが、至ってシンプルです。おまけに本文の紙質も昔のザラバン紙風。だから定価も安くて900円です。ここまでシンプルにすることによって価格を下げて売り出した出版社(光文社)には敬意を表したいと思います。なんせ1000円以内の本はめずらしくなりましたから。

もうひとつは、文庫だが伊藤計劃の『ハーモニー』。表紙は白地にタイトルと著者名と出版社名のみ。あとは、紙質、カバーなど他の文庫本と同じですが、表紙のシンプルさに驚かされます。それでも、文字の配置や字体にデザイン性は求められていて、いい感じになっています。もし、この文字まで白くしてしまえば、ビートルズのホワイトアルバムを思い出します。あれこそ、シンプルの極地でした。


「かんよう出版」も、このようなシンプルさをめざします。

2012年2月5日

本屋の棚

今日の日経朝刊書評面に、東浩紀という作家が、「棚作りの意図がわかりすぎてしまうこと」が理由で、書店に行かなくなったと書いていました。それは、どの書店も多すぎる新刊をずらっと並べて、売れない本やほんとうの良書を置いていないからだといいます。

 確かに、あまりに膨大な新刊の量に、求める本を探すの一苦労ということは多いですね。ただ、書店員が決して意識希薄なのではなく、書店員もそのジレンマに悩んで棚に本を並べているのだと思います。だからこそ、書店員がそういう潮流に巻き込まれずに、独自性を出そうと努力している書店も多いように思います。

 超大手書店にはそれは望むべくもないのかもしれませんが、それでも新刊は新刊で割り切って並べて、売れないけれども読まれるに足る良い本もしっかりと並べて売っている書店もあります。書店員の感性で品選びをして、やはり良書の販売、つまり売れそうになくても、ちゃんと棚に並べて、読者に良書と出会う機会を提供していることに力を入れる本屋さんが増えてほしいと思います。

 

2012年2月4日

Simple is Best


    かんよう出版の本づくりはシンプルをめざします。

 日本で売られている本は、どれもこれも華美で立派すぎます。どれもハードカバー。それに必ずカバーが一枚巻きついています。その上にまた帯がついてます。こんなにたくさん必要でしょうか。

 帯は、本の内容が一目でわかるので買う時には役立つかもしれませんが、あとは不用品です。一枚のカバーも、手にとる回数が増えれば増えるほど、持ち運べ運ぶほど、ずれたり折れたり端がやぶれたり、厄介で邪魔になります。ハードカバーも、頑丈にはなりますが、重くなるし、そこまで頑丈に守らなくても、そんなに本が壊れるということもないでしょう。

 ということは、少々厚手の表紙がついていて、中身がわかる言葉、つまりタイトルと著者名さえ表紙に書いてあれば、それで十分なのです。ただ、それだけでは面白味がないから、若干のデザインが施された装丁は欲しいかも、という程度です。

 本がどれもこれもこんな立派なのは日本だけだと思います。海外では、いわゆるペーパーバックス版でなくても、ハードカバーは少ないし、カバーが一枚巻きついている本もそんなにはないだろうし、帯がついている本なんてほとんどないのではないでしょうか。(すべて見て回ってはいないので、少々自信のない言い方になってしまいましたが)

 という思いから、かんよう出版は、昔某社のCMで流行ったかどうか、正しい英語かどうかしりませんが、Simple is Best をモットーとしているのです。

日本語の醍醐味

 「かんよう出版」はもともと「寛容出版」か「寛容社」という名前で考えていました。

 でも、いまどき漢字ばかりが四文字も並ぶ社名なんて流行らない、ひらがながいい、選挙でも名前をひらがなにするんだから、ということで、「かんよう」とひらがなにしました。
 
 すると、ひらがなにすることで、五つの意味が出てきました。日本語って面白いですね。というか、これこそ日本語の醍醐味。だからシャレというものが面白いのです。

 会う人ごとに、この五つの意味を説明するのですが、食いついてくる方は、やはり中高年の人と、文学好きの人。中高年はこういうシャレが大好き、そして文学好きのひとはこういう言葉の妙味を大切にするひとが多いということでしょうか。

 いずれにせよ、ひらがなにして、偶然にせよ、本づくりにふさわしい意味が五つも重ねることができたのには驚きでした。いろんな言葉はすべて等しく素晴らしいけど、日本語はこの点では特に素晴らしい!!!

2011年11月4日

「きみは見てはいるが観察はしていないのだよ」

    久しぶりに、シャーロック・ホームズの本を開いてみたら、いきなり名言に出くわした。シャーロック・ホームズが単なる娯楽小説でないことが、ほんの数ページ進むだけでも明らかになる。
 ホームズの推理はあまりにも鋭いのだが、種明かしをされると、特段どうということない誰でも気づいていたはずのことが多い。久しぶりに出会った相棒ワトスンがそのことをホームズに指摘すると、彼はかつて一緒に暮らしていた家の階段が何段あるか質問する。何百回もその階段を見ているはずのワトスンはまったく答えられない。そのときに、このセリフをホームズが吐くのだ。「きみは見てはいるが観察はしていないのだよ」・・・。
 ぼくらは日ごろ毎日目にしているものでも、いかにいろいろな大切なことを見落としていることか。ただボヤッと見ているだけで、じっくり見ていない。「観察」していないのである。そんなことでは、たくさんのこと、それも多くの大事なことを見逃していることになる。日常の中に常に鋭い目をもって、ものごとの本質を見抜く力を持ちたいなあ~~~ シヤーロック・ホームズのように。
(コナン・ドイル『シヤーロック・ホームズの冒険』石田文子訳、角川文庫、2010年、9ページ)